卵殻膜の粉末、炎症性腸疾患の新たな治療法に

By Gary Scattergood

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卵殻膜の粉末、炎症性腸疾患の新たな治療法に
卵殻膜から作られた微粉末は、ヒトの直腸組織を使った試験管での実験とマウスを使った動物実験で炎症性腸疾患に効果があることが示された。

東京大学の研究者たちは、試験管での実験では、卵殻膜はリポ多糖体が引き起こす炎症を緩和し、腸細胞の増殖を促進させたと論文で報告した。

マウスの実験では、卵殻膜は疾患活動性指標 (DAI)の数値を有意に抑え、また結腸炎を起こさせたマウスの結腸が短くなるのを抑制した。

研究者たちは Scientific Reports 誌に「卵殻膜は細胞の増殖および元の状態への回復を促進するだけでなく、新陳代謝を高め、また腸内フローラのアンバランスにより生じる腸内毒素症を改善した。これらの効果は、体の免疫力の向上と、腸が炎症を起こしにくくなったことに起因する。」と述べている。

研究者たちによると、卵殻膜は消化されにくく「抗菌性を持つたんぱく質」とのことだ。

彼らは「卵殻膜は難消化性タンパク質で、腸内発酵を促進する植物性繊維と同様の生理学的な機能を持ち、腸内細菌の構成を変えるものと思われる。これは腸炎の治癒に非常に重要な要素である。」と言う。

試験管での実験では、ヒトの直腸上皮性細胞Caco-2 を培養したものが用いられた。実験群には培養した細胞に卵殻膜とリポ多糖体が加えられ、対照群にはリポ多糖体だけが加えられた。

卵殻膜を加えた実験群では24時間後に細胞の生存率が有意に高まっていた。

「インターロイキン(炎症マーカー)の数値はリポ多糖体だけを加えた対照群に比べて卵殻膜とリポ多糖体を加えた実験群の方が有意に低かった。」と研究者は言う。

一方マウスでの実験では、事前に結腸に炎症を起こさせておいた。

潰瘍を起こさせたエリア

卵殻膜を与えられなかったマウスでは体重減少や下痢がみられ、疾患活動性指標は重症を示した。また直腸の短縮が見られた。

一方、卵殻膜を与えられたマウスは、「これらの炎症性腸疾患の症状にはなりにくく、7日目以降、疾患活動性指標の数値は大幅に改善した。」と言う。

「卵殻膜を補助的に与えることにより潰瘍部分の上皮組織が明らかに再生された。」と研究者は報告している。

このため、「私たちの今回の発見は、体と体内フローラの関係、および大腸炎でのそれぞれの役割について包括的な理解を深めるものとなる。

卵製品の製造での副産物として生じる卵殻膜は副作用が少ないことを考えると、この天然由来の低価格な廃棄物は炎症性腸疾患の予防と治療に有望な方法となりえる。」と締めくくっている。

 

出典:Scientific Reports

DOI: 10.1038/srep43993

「卵殻膜の粉末は、腸上皮の創傷治癒を助長し、腸内毒素症を緩和することにより炎症性腸疾患の治療に有効」(原題Egg Membrane powder ameliorates intestinal inflammation by facilitating the restitution of epithelial injury and alleviating microbial dysbiosis​)

著者:Huijuan Jia, Manaka Hanate 他

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