古河栄養健康研究では、定期健康診断で質問紙調査に答えた18歳から69歳の工場労働者1,790名を解析した。全回答者のうち1,620名は男性で、170名が女性であった。
日本の研究者たちは、Nutrition 誌に、ビタミンDにはメタボリック・シンドロームを予防する効果があることを示唆する証拠が増えてきていると書いている。
しかし、これらの研究はアジアに限られており、またビタミンDとメタボリック・シンドロームの関連にカルシウムが影響しているかは解明されていない。
「そのため、本研究では 血清中のビタミンD濃度とメタボリック・シンドロームとの関連を調べ、またカルシウム摂取によるこの関連への影響の可能性を日本の勤労者層を対象に調査した。」と述べている。
「血中ビタミンDの最適量については一致した意見はみられないが、多くの専門家は20ng/mL以下は欠乏、20ng/mLから29ng/mLは不足、30ng/mLは十分とみなしており、当研究ではこの定義に基づき調査対象者を3群に 分けた。」
対象者のうち、ビタミンD欠乏群と、不足群の割合はそれぞれ40.8%と51.4%であった。
ビタミンD摂取量 の高い群
血中ビタミンD濃度が高い群には、年齢が高い男性、酒を飲む人、活発に運動する人が多く、またこの群のカルシウムとビタミンDの摂取量は高かった。調査時点では喫煙者は少なく、またシフトで働く人も少なかった。
メタボリック・シンドロームのみられた219人を解析したところ、研究者たちは「ビタミンDの摂取量が増えるにつれ、メタボリック・シンドロームになる確率は着実に減少することが明らかになった。」と述べている。
血中ビタミンD濃度とメタボリック・シンドローム罹患との負の 相関関係は、44歳以上の対象者および前肥満から肥満体の研究対象者で強く見られた。
カルシウム摂取量が多い研究対象者においては、その傾向はより強くみられた。
ビタミンDがどのようにメタボリック・シンドロームを防いでいるのか、そのメカニズムはまだ解明されていないが、いくつかの説は挙げられている。例えば、ビタミンDによるインスリン分泌の促進や脂肪生成の阻止、体脂肪の減少などである。
論文は、「血中ビタミンD濃度が高いと、日本の成人勤労者層、特に年齢の高い層およびカルシウム摂取量の多い層ではメタボリック・シンドロームになりにくい傾向がみられた。この関係を立証するには、縦断的研究が必要とされる。」と結んでいる。
出典:Nutrition
http://dx.doi.org/10.1016/j.nut.2016.02.024
「日本の勤労者層での血清中の25 ヒドロキシビタミンD濃度とメタボリック・シンドローム: 古河栄養健康研究」(原題 “Serum 25-hydroxyvitamin D and metabolic syndrome in a Japanese working population: The Furukawa Nutrition and Health Study”)
著者:Shamima Akter、他