光線力学的治療法は、ガン細胞を含む非常に小さな領域を標的とすることができ、その間、周囲の正常細胞を損傷から守ることができるという特異性によりしばしば脳腫瘍の治療に用いられている。
光感受性物質が血流に注入され細胞内に集まり、光に曝されるとガン細胞を死滅させる活性酸素種(ROS)を放出する。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らは、タウリンを化学組成に加えることによって光感受性物質の溶解性と有効性を改善する方法を見出した。
タウリンは生体適合性があり水溶性であることと、脳との重要な関連にヒントを得て、ルテニウム錯体をタウリン修飾型に変換した。
OITSのイェ・ジャン准教授は「タウリンによる修飾は極めてシンプルで、基本的な化学反応でルテニウム錯体を新しいタイプの光感受性物質に変えることができます」と語った。
OITSの研究者は、タウリン修飾型ルテニウム錯体は効率的に細胞内に取り込まれ、光に照射されると本来の利点を損なうことなく大量のROSを産生させることを発見した。
さらにこの修飾型化合物はガン細胞の中でも特に脳腫瘍に有効であることが明らかになった。
タウリン修飾型光感受性物質を用いた光線力学的治療法は脳腫瘍治療のための有望な新たな手法であると注目を集めている。
出典:Chemical Communications
DOI: 10.1039/C7CC03337K
“Taurine-modified Ru(II)-complex targets cancerous brain cells for photodynamic therapy”
(ガン性脳細胞を標的とする光線力学的治療におけるタウリン修飾型ルテニウム錯体)
著者:Enming Du、他