栄養不良は癌患者によくみられ、体重や骨格筋の減少を特徴とする複雑な代謝異常である悪液質(カヘキシー)を発症しやすくする。
悪液質はまた、治療に対する患者の反応に悪影響を及ぼし、抑制されない腫瘍の進行は患者の状態を悪化させる。 さらに、化学療法および放射線療法は、患者の栄養状態を損なう可能性がある。
腫瘍を縮小させながら栄養状態を維持するために、悪液質に対する薬物療法、栄養療法、非薬物療法を組み合わせたマルチモーダル療法が、単一療法より有効であるとして、従来の治療法と併用して開発された。
近年、癌が代謝性疾患とみなされるにつれて、ケトン食療法(低炭水化物、高脂肪)の、腫瘍の進行を制限する可能性について研究が進められている。しかしながら、結腸直腸癌に対するこの食餌療法の効果は広く研究されていない。
フォーミュラテスト
これを踏まえ、明治の研究者らは、明治のケトン食である ケトンフォーミュラの結腸直腸癌および悪液質への影響を調べる研究を行った。
7週齢の雄マウスは無作為に、三つのグループ、正常、ガンおよびケトンフォーミュラに分けられた。その後, 結腸26細胞を担がんおよびケケトンフォーミュラグループのマウスに皮下注射をした。正常および担がんマウスには通常食を与え、残りはケトンフォーミュラを自由に摂取させた。
3週間後、ケトンフォーミュラはマウスの体重、筋肉および枝肉重量を維持するのに役立ち、腫瘍重量および血漿IL-6レベルも低下させることが観察された。
ケトンフォーミュラを補充したマウスはまた、他の2つのグループのマウスよりも有意に高いエネルギー摂取量を見せた。
さらに、ケトンフォーミュラグループのマウスは、血液ケトン体濃度が著しく上昇し、「血液ケトン体濃度と腫瘍重量との間に有意な負の相関がある」ことを見出した。
このように、ケトンフォーミュラは「癌の進行とそれに伴う全身の炎症を体重増加と筋肉量に副作用を及ぼすことなく抑制する可能性があり、癌悪液質を制することができると思われる」と記している。
長期にわたるエビデンスの必要性
しかし研究者らはケトンフォーミュラの短期間の抗腫瘍効果と抗炎症効果しか示さなかったと述べており、ケトン食療法が従来の化学療法や放射線療法とどのように併用されるかについては検討しなかったとコメントした。
ケトン食療法が化学療法または放射線療法の抗腫瘍効果を妨げるか、またはそれらの副作用を悪化させるかを見極めるためにより多くの研究が必要であると付け加えた。
「この研究は、癌細胞量によって引き起こされる代謝変化に基づく癌治療の重要性を強調した」と結論づけた。
「癌患者におけるケトン食療法のためのケトンフォーミュラの使用に関するさらなる研究は、癌悪液質の治療に対する価値にとって付加的な証拠を提供するかもしれない。」
出典:Nutrients
https://doi.org/10.3390/nu10020206
“A Ketogenic Formula Prevents Tumor Progression and Cancer Cachexia by Attenuating Systemic Inflammation in Colon 26 Tumor-Bearing Mice
"「結腸癌26移植マウスにおける全身性炎症を減衰させることによるケトン食療法は、腫瘍進行および癌悪液質を予防する」"
著者:Kentaro Nakamura等