これは、シンガポールで開催された最近のProbiota Asia Summitで講演した日本老化防止栄養学会 会長のDr. Bejit Ideasによるもの。
Ideas氏は、代謝産物への関心が、高齢の日本人被験者の微生物叢の研究からどのように生じたのか説明から入った。
100歳以上の微生物叢に関する研究
100歳以上のヒトの腸内細菌叢を評価する研究では、24人の被験者がグループ1(健康な100歳以上)とグループ2(既知の疾患はなく、実験の開始1か月前から抗生物質/プロバイオティクスを摂取していない70〜90歳の高齢者)に分けられた。
糞便サンプルを採取し、栄養平板培地を用いて腸内細菌を分離した。 属と種は16S rDNA分離とPCR法により特定した。
結果は、100歳以上のヒトは、腸内細菌科のグラム陽性菌、ベイヨネラ科、バクテロイデス門など高齢者に比べて微生物の多様性が高いことを示唆していた。
研究者は、100歳以上の腸内微生物叢がタンパク質とアミノ酸を代謝して、p-クレゾール硫酸塩(PAG)とフェニルアセチルグルタミン(PCS)を形成することを発見した。
また、この発見は、100歳以上の人が、長寿の代謝マーカーとして知られるPAG、PCS、2-ヒドロキシ安息香酸(2-HB)などの代謝産物のセットをより多く持っていることを示していた。
2-HBには抗炎症活性があり、炎症誘発性サイトカインを産生するシクロオキシゲナーゼ活性(COX-2)を阻害できる。
学会は現在、特許を申請中。
有益な代謝産物
Ideas氏は100歳以上のヒトの微生物発酵は、CytCオキシダーゼ、SIRT-1、AMPKシグナル伝達経路の活性化を通じてミトコンドリア遺伝子発現を標的とする多種多様な活性代謝物を提供できると考えている。
これらには、ミトコンドリア生合成の中心的なインデューサーであるPGC1-α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター)、呼吸プロセスの重要な調節を行うNRF-1(核呼吸因子-1)、およびミトコンドリアのキー転写活性化因子であるmt TFAM(ミトコンドリア転写因子A)が含まれている。
彼は、これらの微生物叢代謝産物は遺伝子発現を通じてミトコンドリアの生合成と脂肪燃焼を促進できると述べている。
例えば、短鎖脂肪酸は遺伝子発現を誘発し、ミトコンドリアによる脂肪の酸化を増加させ、脂質貯蔵を減少させる。
遺伝子発現の再プログラミング
Ideas氏は、エピジェネティクスに基づいた人工知能モデルを使用して、ヒトの微生物叢ダイナミクスの複製を可能にし、大勢のためのセミパーソナライズトされた栄養を作り出す代謝産物生産システムを開発した。
一つの用途は乳糖感受性のにきびに対するもの。
乳ホエイおよびカゼインのタンパク質は、代謝中にホルモンIGF-1を放出する。 このホルモンは、にきび吹き出物を引き起こし、皮膚のP. acnes微生物叢を増加させる。
健康な人では、皮膚に存在する微生物叢には、クロストリジウム属、ラクノスピラ科、ルミノコッカス科が含まれる。しかし、にきびのあるヒトでは、フィルミクテス門、およびバクテロイデス属が存在する。
Ideas氏によると「尋常性ざ瘡があるヒトは、腸内細菌叢の多様性が低下し、アンバランスになっています。」
彼は、ザクロ果実の発酵に関する研究を実施し、皮膚微生物叢を調節する特定の代謝産物を得た。この研究では、ザクロの果実を木についたまま分解させ、微生物叢を豊かにさせた。
そして、特有の代謝産物を得るために果実全体を発酵させる細菌株を発見した。
無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、ザクロの代謝物を4週間経口投与したところ、治療群(代謝産物)でP. acnesの25%の減少が見られた。