記憶のためのプロバイオティクス?森永支援RCTは菌株が日本人高齢者の認知機能を改善することを明らかにする

B. breve​ A1は乳児に由来する菌株であり、記憶機能の管理と脳の炎症の抑制における治療の可能性についてはマウスモデルで以前に研究されていた。

MCIは、認知機能の低下を特徴とし、通常は日常生活に支障をきたすことはないが、アルツハイマー病 (AD) や認知症の発症リスク増加と関連している。

Shimada Hiroyukiら​による以前の研究は、高齢日本人集団におけるMCIの罹患率が約13.9%であることを報告した。本研究で報告された世界平均は約18.9%であった。

研究者らは、「本研究は、MCIが疑われる被験者においてプロバイオティクスB. breve​ A1の認知機能増強効果を示す、ヒトにおける最初の二重盲検プラセボ対照研究である」と記している。

研究デザイン​

本研究では、東京都内の50～79歳の健康な非肥満高齢者80名を対象とした。全員がMCIを患っており、RBANSスコアが低く（平均31.5点）、MMSEスコアが22点以上（平均24.5点）と特定された。

認知症と診断された参加者や、認知機能に影響を与えるサプリメントを使用した参加者は、本研究から除外された。

参加者らは、B. breve​ A1摂取群とプラセボ摂取群に分けられた。

B. breve​ A1摂取群には、担体としてトウモロコシデンプンを主成分とするB. breve​ A1（2×1010 CFU）の凍結乾燥粉末が与えられた。プラセボカプセルはトウモロコシデンプンのみで構成されていた。各参加者は、プロバイオティクスまたはプラセボカプセルを１６週間、毎日２個摂取するように指示を受けた。

一次転帰は神経心理学的状態の評価のための反復可能バッテリー（RBANS）の認知的スコアで、二次転帰は日本語版MCIスクリーン（JMCIS）テストで評価した。

改善されたメモリースコア​

RBANS総スコアは、プラセボ群と比較して治療群で11.3ポイント有意に改善した(p<0.0001)。

特に、所見は即時記憶、視空間/構成および遅延記憶の有意な改善を示唆した(p<0.0001)。言語と注意のスコアだけは、プラセボより改善がみられなかった。

研究者らは、「B. breve ​A 1摂取群の16週後に見られた11.3ポイントの改善は顕著であった。対照的に、同様のMCI集団におけるアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の食事補給は、 13週後のRBANS即時記憶スコアにおいて約6ポイントの有意な改善であった」と指摘した。

「B. breve​ A 1を用いた今後の長期縦断的研究は、さらなる明確な記憶の改善を明らかにする可能性がある」としている。

JMCISスコアもプラセボ群より改善した。

研究者らは、B. breve​ A1が海馬に影響を及ぼす可能性があり、短期記憶および長期記憶にとって重要であることを示唆している。

この研究では調査されなかったが、「ミクログリア活性化/炎症を研究するために、MCI被験者において使用された脳炎症のマーカーであるTranSlocatorPrOtein (TSPO) を使用した将来のポジトロン放射形断層撮影画像研究 (PET) は、脳に対するB. breve​ A1範囲効果を非侵襲的に可視化するのに役立つであろう」と述べた。

研究者たちの次のステップは、B. breve ​A1がどのようにMCI集団の記憶力の改善を引き起こしていることを理解するために、血液、脳脊髄液、糞便を使用して探索的なバイオマーカー研究を行うと同時に、AD認知症を治療するための可能性を評価することである。

「正確な機序の同定はまた、何が認知症および関連するCNS障害を引き起こしているのかについて切望されている解明をもたらし、様々な神経病理学におけるさらなる介入研究の正当化に役立つ可能性がある。」

この治療法は副作用の報告もなく忍容性が良好であり、一般集団における認知障害の発症を予防するための安全で有効なアプローチを提供できる可能性がある。

出典：Journal of Alzheimer's Disease​

DOI: 10.3233/JAD-200488

「軽度認知障害が疑われる高齢者の認知機能改善におけるプロバイオティクスBifidobacterium breve​。無作為化二重盲検プラセボ対照試験」

著者：Jinzhong, 等