12週間の試験終了時まで、AT群はプラセボ群と比較して複合記憶と言語記憶のスコアが高かった。
また、AT群では、より多くの人や物の名前を覚えることができた。
このランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果は、先ごろ、Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition誌に掲載された。
この研究は、認知機能に対するアスタキサンチンとトコトリエノールの効果を評価した最初の研究であるとも言われている。
研究デザイン
軽度の物忘れを経験している健常者44人を対象に、2018年5月から9月にかけて医療法人社団 盛心会 タカラクリニックで試験が行われた。
試験期間中、AT群は、アスタキサンチンとトコトリエノールを含むカプセルを1日1回、朝食前または朝食後に服用した。
カプセルには、BGG Japan株式会社のヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチン「AstaZine®」9mg、パームトコトリエノール「TheraPrimE TM」50mgが含有されていた。
処理速度、言語記憶、視覚記憶などの様々な認知機能領域を評価するCognitrax テストを用いて、被験者の認知状態を評価した。
言語記憶テストでは、被験者は、30個の単語の中に入れ子になっている15個の単語を識別するように求められた。
視覚記憶テストでは、単語を図形に置き換えて同じ手順で行われた。
最終的に、正解数の合計を点数化した。
被験者の認知状態に関する主観的見解も検討された。
ここでは、被験者に 「この1週間、よく忘れ物をしたことがありますか?」や 「この1週間、記憶力の低下が気になりましたか?」などの質問を行った。
結果解析
結果解析は、アスタキサンチンとトコトリエノールの摂取が、複合記憶力と言語記憶力を改善したことを示した。
両群から等しく選ばれた36名の被験者の結果を分析した。
AT群の複合記憶スコアがベースラインの71.1±10.7から91.2±7.7に上昇していた。
プラセボ群のスコアも改善したが、74.6±11.3から84.1±17.2へと小さい範囲であった。
言語記憶スコアは、AT群で70.8±13.3から94.4±8.8、プラセボ群で77.4±15.4から
89.5±16.0と上昇した。
プラセボ群の得点にも改善が見られたが、AT群の得点はなんとか上昇し、「平均」の範囲に達した。
主観
また、AT群では人名や物の名前を覚える能力に対する主観的な見方にも改善が見られた
研究者らは、スケールシステムを用いて、ポイントが低いほど被験者の状態が良くなるという改善を測定した。
この場合、「先週、一週間の間に、人の名前や物の名前を覚えるのに苦労したことがあるか」という質問のスケール番号は、調査開始時には両群ともに4.0であった。
試験終了時には、プラセボ群に変化がなかったのに対し、AT群ではスケールが3.0まで低下した。
本試験では有害事象は認められなかった。
「本研究は、アスタキサンチンとトコトリエノールの同時摂取による認知機能への影響を評価した最初の研究である。」
「アスタキサンチンとトコトリエノールを併用して摂取することで、記憶力の低下を感じる日本人成人の複合記憶力と言語記憶力が向上することが示された」と研究者たちは結論づけている。
制限
研究者らは、この研究では、アスタキサンチンとトコトリエノールが認知と言語記憶を改善するためにどのように相互作用したか解明していないとしている。
また、アスタキサンチンとトコトリエノールの血清中の量は測定されなかった。
そのため、アスタキサンチンとトコトリエノールの血清レベルが上昇したかどうかを確認することはできなかった。
研究者らは、血中AT値と認知機能を調べるための今後の研究が必要であるとしている。
また、ATが認知機能を改善するメカニズムについても、今後の研究で明らかにしていく必要がある。
出典:Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
「アスタキサンチンとトコトリエノールの摂取による認知機能の改善:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験」
DOI: 10.3164/jcbn.19-116
著者:Takahiro Sekikawa,等