必須アミノ酸はロイシン、フェニルアラニン、リジン、イソロイシン、ヒスチジン、バリン、トリプトファンの7つ。
ランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、これらのアミノ酸計6gを摂取した参加者は、プラセボ群に比べて認知機能や社会的相互作用が有意に改善され、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できることが示された。
急速に高齢化が進む日本にとって、認知機能の低下は大きな社会問題となっている。
Frontiers in Nutrition誌に掲載されたこの研究は、味の素と東京都健康長寿医療センター研究所が行った。
スタディデザイン
健康で、学習機能に障害はなく、認知症と診断されていない、総勢105名(55歳以上)が参加した。
とは言え、参加者は物忘れの自覚があったり、指摘されたりしていた。
彼らは、無作為にプラセボ群、アミノ酸3g群と6g群に分けられた。
味の素は、今回の試験のために専用の粉末を配合した。
投与群には、ロイシン0.47 g、フェニルアラニン0.42 g、塩酸リジン0.33 g、イソロイシン0.13 g、塩酸ヒスチジン0.08 g、バリン0.06 g、トリプトファン0.01 gを含む顆粒状粉末 (1.5 g) が用意された。
3g群では、被験者は空腹時に1日2回粉末を服用した。
6g群は、2倍の量を1日2回服用した。
プラセボ群の粉末はコーンスターチと乳糖であった。
各グループは、粉末を12週間服用した。
主要評価項目は認知機能、副次評価項目は心理社会的機能であり、ベースライン時と12週目以降に評価した。
スペシャルセブン
必須アミノ酸は9種類あるのに対し、今回の試験では7種類のみの評価を行った。
著者の一人で味の素バイオ・ファイン研究所のMichihiro Takada氏は、認知機能の維持に欠かせない脳内の神経伝達物質はアミノ酸から作られていると説明している。
「7種類のアミノ酸組成は、最適なアミノ酸組成を脳に届けることをコンセプトに設計されています。」
「ロイシン、バリン、イソロイシン、リジンはグルタミン酸に、フェニルアラニンはチロシンに変換され、神経伝達物質であるドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの合成に関与しています。これらは学習、記憶、注意、実行機能、モチベーションなどに重要な役割を果たす神経伝達物質です。」
「また、トリプトファンやヒスチジンもそれぞれが、体内でセロトニンやヒスタミンなどの神経伝達物質に変換され、精神安定や覚醒に重要な役割を果たしています。」
Takada氏は、今回の試験ではスレオニンとメチオニンが含まれていなかったことについて、「認知機能とそれを支える脳機能との関係について十分な知見が得られなかった」 と説明した。
結果は、6gのアミノ酸を摂取した参加者が作業を終了するまでの時間は、12週間後にプラセボ群と比較して14.6秒と有意に改善された(p=0.04)。
研究者らは、「パフォーマンスが速くなるということは、作業に集中する能力、複数の作業に注意を払う能力、作業を行うために必要な情報を記憶する能力の向上を示唆しており、作業記憶と関連している」と記している。
これらの結果は、6gのアミノ酸を毎日摂取することが、注意力と実行機能の向上に寄与することを示している。
プラセボ群と3g群の差は有意ではなかった(p=0.94)。
副次評価では、ポジティブな感情(陽気、活発、新鮮)に関連したスコアは、社会的相互作用と同様に改善した。
7種類の必須アミノ酸の日常摂取により、注意力や認知柔軟性、心理社会的機能の改善が見られたが、効果には1日6gの摂取が必要であった。
今回使用した7種類のアミノ酸のうち、トリプトファンやフェニルアラニンなどのアミノ酸の中には、メンタルヘルスに関連した抗うつ剤のような作用を持つ可能性がある。
研究者らは、必須アミノ酸の摂取は、アミノ酸が脳に移動することで脳の機能に直接影響を与え、特に前頭葉の機能に影響を与えると説明している。
しかし、「必須アミノ酸摂取の介入効果を検討することを目的とした本研究の結果のみに基づいて、機構を解明することは不可能です。」
さらに、摂取中止後に介入効果が残っていたかどうかは明らかではない。
介入期間がわずか3ヶ月であったため、研究者らは、アミノ酸の効果が将来の認知機能低下予防に影響を与えるかどうかを検討するために、長期的な観察研究を推奨している。
出典:Frontiers in Nutrition
https://doi.org/10.3389/fnut.2020.586166
「7種の必須アミノ酸の摂取は中年および高齢者の認知機能と心理学的および社会的機能を改善する: ランダム化二重盲検プラセボ対照試験」
著者:Hiroyuki Suzuki,ら