筋損傷にHMB:日本のRCTにより、長期間の補給で効果が出やすいことが判明

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日本の研究者グループは、HMBを2週間摂取しても、急性軽度外傷を受けた高齢者の筋損傷を改善することはできなかったが、より長期的な使用がより有益であるとしている。

日立総合病院と筑波大学の研究者らは、Nutrients誌において、HMBを2週間摂取したにもかかわらず、筋損傷バイオマーカーの減少や筋量の改善が見られなかったことを指摘している。

しかし、過去の研究では、12週間から48週間の長期にわたってHMBを補給することで、健康な高齢者の筋肉量増加などの有益な結果が得られることも指摘している。

本研究は、70歳以上で、筋肉の軽傷により少なくとも3日間の入院が見込まれる50名の患者に焦点を当てた。

介入群は、アボットジャパンから発売されているHMB複合サプリメント(商標名:Abound)を摂取した。1袋あたりHMB1.2g、グルタミン7g、アルギニン7gが含まれている。

一方、対照群は、1パックあたり3.6gのタンパク質と3gのグルタミンからなるHMBを含まない製品を摂取した。両グループとも該当品を1日2パックずつ摂取した。

知見

その結果、介入群は対照群に比べて、筋損傷マーカー(N-titin/Cre)のレベルが有意に高いことがわかった。

健康な成人の場合、筋損傷マーカーのレベルは1.09~7.09pmol/mgCreである。

介入グループでは、1日目から3日目にかけて、この値が22.3pmol/mgCreから27.3pmol/mgCreに増加していた。

一方、対照群では20.6pmol/mgCreから18.2pmol/mgCreに低下していた。

「1日目のN-titin/Cre値は外傷の影響を受けていると考えられるが、3日目のN-titin/Cre値が高い場合は、ストレスによる炎症によって持続的な筋損傷が出現している可能性がある」 と説明している。

大腿四頭筋の大腿直筋の横断面積(RFCSA)で測定した筋肉量も、介入群で減少した。

これは、必須アミノ酸の摂取量が不足し、それが筋肉のタンパク質合成に影響を与えたためではないかと研究者は述べている。

それによると、両グループともタンパク質の摂取量は約0.9g/kgで、高齢者の推奨摂取量である1.0~1.3g/kgを下回っていた。

「また、筋タンパク質の分解は非活動や炎症によって促進されることが知られており、損傷後にはタンパク質の必要量が増加します。」

「重篤な疾患の急性期におけるタンパク質の必要量は1.3g/kg以上、回復期にはさらに2.0~2.5g/kgまで増やすことが推奨されています。」

「筋タンパク質の合成に必要な必須アミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸)が十分に摂取されていないことも、HMB摂取による効果が得られないことに影響しているのではないでしょうか」 としている。

それにもかかわらず、両グループ間で握力に大きな差はなく、両グループとも同程度のレベルまで握力が向上した。

ICU 入院

一方、入院中の合併症はHMB補給の結果に影響し、急性期が終わったときにHMBを使用することは有益である。

これは、重症化した患者では、アミノ酸を過剰に摂取すると自己消化が抑制されるためである。そのため、超急性期にはアミノ酸の投与量を減らす必要がある。

 

出典:Nutrients

https://doi.org/10.3390/nu13030899

「高齢者の急性軽度外傷に対するβ-Hydroxy-β-Methylbutyrateの無作為化比較試験における尿中Titin N-Fragmentの評価について」

著者:: Hidehiko Nakanoら