ノビレチンはオレンジ、レモンなどの柑橘類に含まれるフェノール成分(ポリメトキシフラボン)のことで、自然界に存在するものである。
肥満性糖尿病マウスの高血糖症、耐糖能異常、インスリン抵抗性を抑制する効果があるという過去の研究にもみられるように、ノビレチンは健康に一定の効果があるという説が打ち出されている。
しかしながら、少量のノビレチンを長期間摂取することが、高脂肪食を与えられた肥満性 マウスの代謝異常にどれだけ効果があるかは依然明らかになっていないと韓国のチュンアン大学医学部、キョンブク国立大学、プギョン国立大学および日本の中部大学の研究者は話している。
Molecular Nutrition and Food Research誌に掲載された論文には、マウスは16週間ノビレチンを与えられたものと与えられなかったものの2種類で、ともに高脂肪食を摂っていた、と書かれている。
ノビレチンは脂肪組織内の炎症性遺伝子の発現 を大幅に抑えるだけでなく、血漿の炎症性サイトカイン値も著しく減らしたと報告されている。
ノビレチンを摂取したマウスは、耐糖能異常やインスリン抵抗性にも改善がみられると同時に、血漿インスリン値も下がった。
しかしながら、脂肪組織の重量には影響がなかった。
「慢性的に高脂肪食を与えられたマウスにメタボリックシンドロームの一般的な特徴が現れることが知られている」と書かれている。
「最新の研究では、少量のノビレチンを長期間摂取することが、高脂肪食を与えられた肥満マウスに起こる代謝障害に効き目があるが、肥満には目立った影響を及ぼさない」ことが付け加えられている。
「脂質合成遺伝子の発現量や脂肪酸合成酵素の活性が同時に上昇することによる脂肪組織の重量には、ノビレチンは影響を与えなかった」
研究者は、ノビレチンが高脂肪の食生活による損傷から肝臓を守るかということについても検証した。
「ノビレチンの摂取は、高脂肪食を与えられたマウスの肝臓内の腫瘍壊死因子-α 伝令リボ核酸(TNF-α mRNA)の発現を著しく減少させた。さらに、血漿のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとアラニン・アミノトランスフェラーゼの値や肝臓細胞損傷の指標が対照マウスに比べ、著しく低下した」
「肝臓の三重染色も、ノビレチンの摂取が対照マウスに比べ、コラーゲン沈着を抑えることを明らかにした」
研究は、少量のノビレチンを長期間摂取することにより、非アルコール性脂肪性肝疾患や脂質異常症など高脂肪の食生活が原因の代謝障害に有効な手立てとなると結んでいる。
「これらの結果は、肥満に対するノビレチンの効果とは別に、肝臓脂肪酸酸化、消炎作用、インスリン抵抗性の改善と関連があるだろう」と述べられている。
出典:Molecular Nutrition and Food Research
doi: 10.1002/mnfr.201600889
「少量のノビレチンの長期間摂取が、食餌性肥満の脂肪塊を変容させずに、肝臓脂肪症、インスリン抵抗性、炎症を改善する」
著者:Young-Je Kim他