四日市羽津医療センターの炎症性腸疾患センターの専門家によると、一般にプロバイオティクス、オメガ3、グルタミンなどの多量のサプリメントが腸疾患の治療に使われているという。
しかし、Current Opinion in Biotechnology誌の記事では、「このような治療法の有用性はまだ解明されていない」と述べられている。
プロバイオティクスに関して、研究者達は、潰瘍性大腸炎や嚢胞炎における寛解導入および維持に対する効果を裏付ける根拠があるとしている。
しかし、クローン病については、プロバイオティクス投与に関する無作為化比較試験の体系的な検証(システマティックレビュー)はいくつか行われているが、寛解導入に関わるものは1件のみであり、
「RCTが適切に設計されていないため、クローン病の寛解導入に対するプロバイオティクスの有効性について、何らかの結論を下すための根拠は不十分である」としている。
プレバイオティクスについては、クローン病治療に対する有効性を評価するための小規模な臨床試験が行われており、相反する結果が報告されている。
「クローン病におけるプレバイオテクス効果を厳密に評価するためには更に研究していく必要がある」とある。
同様に、シンバイオティクスは、臨床研究に有望な機会を提示しているが、クローン病と関連して「シンバイオティクス投与の有効性を支持する研究は非常に少ない」とされている。
オメガ3の可能性の評価に関してはより多くの研究が行われているが、おそらく寛解維持に対する有効性はないであろうと見られている。
「コクランのグループは、クローン病の寛解維持に対してオメガ3多価不飽和脂肪酸の有効性を評価するためのメタ分析を実施した」と記事にある。
オメガ3群の患者の39%が12ヶ月後に再発したのに対し、プラセボ群の患者は47%であった(6件、患者1,039例)。
しかし、「バイアスリスクが低いとされる2つの大規模な研究を考慮したところ、有効性は統計的に顕著ではなかった。オメガ3群の患者の37%が12ヶ月後に再発したのに対して、プラセボ群では42%であった」
一方、体系的な検証(システマティックレビュー)では、グルタミンの投与は、活動期のクローン病に有効ではないと示唆しているが、研究者は、これらの結果は少数の患者に基づいたものであり、注意深く解釈する必要があると警告する。
「クローン病の寛解導入に対するグルタミンの有効性を調査するには、大規模なRCTが必要である」と述べている。
この論文では、経腸栄養は成人ではなく子供に対して有用であると結論付けている。
「食事療法および経腸栄養療法の治療効果に関する我々の現在の認識は、将来的に、より多くの患者を対象とし適切に設計されたRCTによって強化される必要がある」としている。
出典: Current Opinion in Biotechnology
第44号、2017年4月、69–73ページ
“クローン病における食事療法と経腸療法”
著者: 山本 隆行、他