研究では関節リウマチ患者400名以上から成る実験群を対照群と比較したが 、実験群は一価不飽和脂肪酸および肉類の摂取量が対照群より有意に少ないことが明らかにされた。
研究者たちは、「この結果は、一価不飽和脂肪酸の摂取が関節リウマチの症状に好影響を与え、1日の摂取量が増加すると関節リウマチ患者の症状が緩和されることを示している。」と言う。
Clinical Nutrition 誌の論文で、同研究者たちは、オリーブオイルに豊富に含まれる一価不飽和脂肪酸が関節リウマチの症状に好影響を与えることは以前の研究で示されていると述べている。
「しかし、その研究では方法が限定されていた。そこで、本研究では地中海料理のなかで関節リウマチの症状を緩和させる成分を特定し、最小限の負担で緩和効果を得る食事療法のポイントを明らかにすることを目的とした。」
そのため、同研究では2010年に始まり2020年に終了するTOMORROW コホート研究の対象者を関節リウマチの有無で分けて解析した。
研究では関節リウマチの患者208名、および患者と同じ年齢、性別の健康なボランティア205名を対象とした。摂取した食事および栄養素は、自記式食事歴法質問票を基に分析され、地中海料理のスコアを食事内容と症状の程度から算出している。
正の相関関係
同研究によると、地中海料理に多く含まれる一価不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸、アルコール、豆類、ならびにその他の野菜や豆類とその他野菜の合計、肉類、牛乳および乳製品の摂取量が関節リウマチ患者群では対照群より有意に少なかった。
関節リウマチの症状を28箇所の関節で評価(DAS28-ESR評価)し、また地中海料理に豊富に含まれる成分の摂取量を調べたところ、症状の軽症度と摂取量の多さには正の相関関係が見られた。
「DAS28-ESR 評価は一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の摂取量に年齢を加味して調整したものと非常に強い相関関係にあった。ロジック回帰分析では、関節リウマチ患者グループの症状緩和をもたらす因子として一価不飽和脂肪酸が挙げられた。」と報告されている。
また、肉類の摂取は関節の腫れと非常に強い負の相関を示した。
しかし研究者たちは、一価不飽和脂肪酸の摂取量を増やすために肉類の摂取量を増やすことは避けるように警告している。
「肉類の摂取量の増加は、飽和脂肪酸の増加に繋がる他、特定の抗原の増加にも関係しており、この特定の抗原には関節リウマチの症状を引き起こすと考えられるタンパク質も含まれる。そのため、一価不飽和脂肪酸は、オリーブオイルやアボカドオイルから摂取するのが理想的と考えられる。」と大阪市立大学の研究者たちは言う。
一価不飽和脂肪酸の1日の摂取量が増加すると関節リウマチ の症状は緩和すると研究では結論付けられているが、研究者たちは「研究の対象は日本人に限られており、しかも関節リウマチの疫学調査であるため、大半は女性、特に高齢の女性であった。そのためこの研究結果を一般化することはできない。」と述べている。
http://dx.doi.org/10.1016/j.clnu.2017.02.011
「地中海料理の成分で、関節リウマチの症状活動性を緩和する主な成分は一価不飽和脂肪酸の可能性」TOMORROW 研究 (原題 “Monounsaturated fatty acids might be key factors in the Mediterranean diet that suppress rheumatoid arthritis disease activity: The TOMORROW study”)
著者:松本 佳也、他